フィリピン永住ビザ、SRRVとSIRVの違いがわかる早わかり比較

最終更新日 2022-10-25

リタイヤした後はフィリピンをセカンドホームにしたいと考えた場合、現在の年齢が50歳以上であれば、SRRV(特別居住退職者ビザ)とSIRV(投資家用特別居住ビザ)が選択肢にあがります。

どちらもフィリピン国内に一定額の預金か投資をすることと引き換えに永住権を取得できるビザです。国が定めるビザプログラムである以上、この二つのビザには明確な違いがあります。

SRRVはフィリピン退職者庁(PRA)が所管するプログラムであるのに対して、SIRVはフィリピン投資委員会(BOI)が所管するプログラムであることから、その目的や預託資金の用途、年齢制限、ビザ取得手続き、ビザ保有を継続するための義務において大きな違いが見られます。

この記事ではSRRVとSIRVという永住ビザの違いを早わかり比較表に基づき解説していきます。

目次

  1. SRRVとSIRVの概要
  2. SRRVとSIRVの早わかり比較表
  3. SRRVとSIRVの違いのポイント
  4. おわりに

1.SRRVとSIRVの概要

まず始めに、SRRVとSIRVの概要を見ておきます。

SRRV(特別居住退職者ビザ)とは、所定の年齢(2021年11月現在では50歳以上)に達した外国人がSRRVのカテゴリーごとに定められた所定の預託金(例えば「SRRV Smile」のカテゴリーでは20,000米ドル(約225万円))をフィリピン国内の銀行に預けることと引き換えに永住権を取得し、フィリピンでリタイアメント・ライフを送ることができるという特別居住ビザです。ビザが有効な期間はその預託金を自由に引き出すことはできません。「SRRV Classic」のカテゴリーを選択すればコンドミニアムの部屋の購入や土地付き住宅の長期リースに預託金を転用することができます。扶養家族の帯同も可能です。

SIRV(特別投資家居住ビザ)とは、21歳以上の外国人がフィリピン国内に75,000米ドル(約850万円)以上の投資をすることと引き換えに永住権が得られるという特別居住ビザです。所定額以上の投資が維持されている限り、他の条件を満たしていれば無期限にフィリピンに滞在することができます。扶養家族の帯同も可能です。

どちらも一定額以上の投資をフィリピン国内にすることと引き換えに得られる期限の定めのないビザです。SRRVは選択するカテゴリーによって投資をしなくてもよく、投資をする場合には投資対象が狭く限定されます。SIRVは投資をすることが必須であり、投資対象はかなり広範囲にわたります。ただし2021年11月現在ではコンドミニアムの部屋、卸売業、レストラン業などへの投資は現在対象外となっています。

SRRVとSIRVのどちらのビザが適しているかの判断は、年齢が50歳以上であるか50歳未満であるか、フィリピンに長期滞在する主目的がレジャーなのか投資なのか、申請時点の預託金として用意できる資金どれくらいか、などが最初の入り口になります。特典やサポートが充実している方がよいかという点も判断材料になると思います。その他、以下の比較表と「3.SRRVとSIRVの違いのポイント」を参考にどちらが自分に適しているか検討してみてください。

2.SRRVとSIRVの早わかり比較表

SRRVとSIRVの違いがわかるように比較表を作成しました。最新の情報に基づいて作成していますが、個々の申請状況により必要書類が異なる場合があり、また情報は頻繁に変更されますので、参考情報としてご利用ください。

項目SRRVSIRV
①正式名称Special Resident Retiree’s Visa(特別居住退職者ビザ)Special Investor’s Resident Visa(投資家用特別居住ビザ)
②所管官庁PRA(フィリピン退職者庁)BOI(フィリピン投資委員会)
③制度目的外国人にとって魅力的なリタイヤメント・ライフ環境を提供することにより、フィリピンの社会経済的発展と外貨準備高の増加を図る外国からの投資を奨励する
④法的根拠行政命令1037号行政命令226号
⑤有効期限無期限無期限(投資が存続している限り)
⑥必要預金・投資額・基本的には20,000米ドル以上(但し、年金受給者は10,000米ドル以上)必要。

・SRRVには次の4つのカテゴリーがある。
①Smile・・・PRA認定銀行に20,000米ドルの預託。(投資への転用不可)
②Classic・・・50歳以上で年金無しの場合は20,000米ドル、50歳以上で年金有りの場合は10,000ドル米ドルを預託。年金は単身で一月800ドル以上、夫婦で一月1,000ドル以上必要。預託金は、50,000ドル以上の物件に限られるがコンドミニアムの部屋の購入又は土地付き住宅の長期リースなどの投資に転用可能。
③Human Touch・・・50歳以上の病気療養者向け。一月1,500米ドル以上の年金、フィリピンで認められた保険証書、10,000米ドルの預託金が必要。
その他、④Courtesy, ⑤Expanded Courtesyについては一般的な方を対象としていないため説明は省略。
75,000米ドル以上
⑦年齢制限50歳以上(※35歳から49歳までのプログラムは2021年12月2日現在停止中)21歳以上
⑧投資対象投資は義務ではない。
SRRVのカテゴリーがClassicの場合、投資対象は、居住可能なコンドミニアムの部屋の購入、土地付き居住建物の長期リースに限られる。
以下のものに制限されている。
・株式公開会社
・IPP(投資優先計画)プロジェクトに参加している会社
・製造業又はサービス業に従事している会社
・政府証券(国債等)
※卸売業に従事する会社の株式の取得とコンドミニアムの部屋への投資は認められなくなった。レストラン業への投資も認められない。
⑨扶養家族の帯同〇(配偶者と21歳以下の未婚の子供)〇(配偶者と21歳以下の未婚の子供)
⑩申請人資格・年齢が50歳以上の外国人
・フィリピン移民法で入国が許可されない外国人(精神病、伝染病等にかかっていると診断された者、不道徳行為に関わる罪で刑に処せられた者、公共の負担となる者等)はSRRVを取得する資格がありません。
年齢が21歳以上の外国人で次のいずれにも該当する者。
・不道徳行為に関わる罪で刑に処せられたことがない者
・忌まわしく、危険な又は伝染性の病気にかかっていない者
・精神病又は精神障害で施設に入れられたことがない者
・少なくとも75,000米ドルの投資をフィリピン国内に行う意思及び能力を有する者
・1か月以上の有効期間を有する観光ビザ(9(a))を保有する者
⑪申請書の提出先PRABOIのIncentives Administration Service
⑫申請に要する期間1.日本での書類準備期間:約1~2か月
2.現地での手続き:約1~2か月

・SRRVの申請のためにフィリピンに入国する必要がある。有効なビザを持たない者は短期観光ビザ(9(a))が必要となる。それを取得するためにはPRAに対して日本からオンラインでSRRV申請書類の提出(スキャンデータで提出)及び必要な料金の支払いを行い、EED(入国免除文書)発行のための事前審査を請求することができる。EEDを受領できた後にフィリピン渡航の旅程を組むことが推奨されている。その後、現地に渡航し申請書類原本を提出し必要な手続きを行う。(※追記:2022年4月1日以後は、一定の条件の下でEEDが不要となりました。在フィリピン日本国大使館の【領事班からのお知らせ】を参照してください。)
1.日本での書類準備期間:約1~2か月
2.現地にてProbationary (仮発給)SIRVの申請
  ・BOIで7営業日
  ・BI(フィリピン入国管理局)で10営業日以上
3.現地にて仮発給SIRVから無期限SIRVへの変換
  ・BOIで7営業日
  ・BIで10営業日以上
※申請人及び帯同扶養家族が手続完了前に出国してしまうと、当該SIRVは再審査(revalidation)の対象となる場合があるので要注意
⑬申請に要する費用本人は1,400米ドル、被扶養者は300米ドル【申請時】本人は300米ドル相当のペソ、被扶養者1名につき300米ドル相当のペソ
【申請後】定期預金から投資への転換、仮発給SIRVから無期限SIRVへの変換、SIRV IDの発行、その他について諸費用が発生
⑭必要書類等・願書
・有効なエントリービザ付きのパスポート
・健康診断書(領事認証)
・無犯罪証明書(領事認証)
・証明写真
・預託金の振込み証明書
・家族も申請する場合は戸籍謄本
・願書(公証人認証、写真貼付)
・誓約書(署名、公証人認証)
・履歴書(14歳以上の扶養家族を含む)
・無犯罪証明書(領事認証)
・健康診断書(フィリピン検疫局による認証)
・DBPによる送金及びペソへの変換に関する証明書
・出生証明書、戸籍謄本(領事認証)
・該当する場合は婚姻証明書(領事認証)
・パスポート
・実際に投資を行ったことの証明書類
⑮ビザ更新等の要否年会費(Annual Fee)の支払い義務あり。360米ドル(本人と被扶養者2名まで)・実際に投資を行ったSIRV保有者にはSIRV ID(カード)が付与される。同カードの有効期間は原則1年間であり、1年毎更新が必要。更新時には宣誓付き年次報告書と関連書類を提示・提出する。
・投資対象によっては有効期間が3年間、3年毎更新のSIRV IDが付与される場合もある。
⑯ベネフィット(メリット)1) 数次入国特権付きの無期限の滞在
2) 以下のものが免除される。
 ・フィリピン入国管理局のACR-Iカード(年次報告書)
 ・7,000米ドルまでの家財道具及び身の回り品の1回限りの輸入に対する関税及び税金、年金からの税金
 ・旅行税(但し、退職者が最後に入国した日から1年以上フィリピンに滞在していない場合に限る)
 ・学生ビザ/ 就学許可
3) フィリピンの一部の空港内でのGreet & Assistプログラム(お出迎えと案内サービス)
4) PRAニュースレターの無料購読
5) PRA認定マーチャントパートナーからのディスカウント特権
6) 他の政府機関とのやりとりの無償支援
7) PHILHEALTH(医療保険)の受給権
1) 無期限でのフィリピン滞在
2) 数次入国特権
3) フィリピン入国管理局での出国や再入国に必要な手続き(ECC, SRC)、外国人登録(ACR)が免除される。
⑰ビザ保有者の義務1) 願書記載事項(住所、氏名、連絡先等)に変更があった場合の届け出
2) 自発的に退会する場合には30日前までの届出
3) PRA規則の遵守
1) ビザ保有に必要とされている投資の維持
2) SIRV IDの更新
3) ビザ保有上必要な各種費用の支払
4) 毎年の投資に関する報告書の提出

3.SRRVとSIRVの違いのポイント

(1)制度目的、所管官庁による違い

早見表②、③に書いたように、SRRVは退職者庁が所管する退職者のためのプログラムなので、一定額の外資を預かる見返りとして退職者が快適なリタイアメント・ライフをフィリピンで送ることができるように制度設計されています。そのため一旦ビザが許可されれば、維持するための面倒な手続きは少ないようです。また運転免許証の取得などの他の官庁がからむ手続きをする場合に退職者庁からのサポートが得られるなど、このビザ保有者に与えられる特典が多く用意されています(早見表⑯)。

SIRVの方は投資委員会が所管する投資家のためのプログラムなので、フィリピン国内への一定額以上の実際の投資を行っていることの見返りとして永住権を与えるものです。21歳以上であれば申請可能、投資対象分野は国益を考慮して決定、このプログラムに参加する投資家には投資に関する毎年の報告書提出義務が課されるなど、投資対象の選定やその後のフォローに関して積極的な関与が求められています。

(2)申請手続き上の違い

申請に必要な書類はSRRVとSIRVとではそれほど大きくは変わりありません。SIRVの方が投資関連の書類が増えるくらいです。

申請場所はSSRVがフィリピン国内のPRAのフロントデスク、SRIVがBOIのIncentives Administration Serviceです。どちらもフィリピンに入国して申請人本人が出頭して申請する必要があります。

大きく異なる点はSIRVでは2段階のステップを踏む必要がある点です。

SRRVの場合は基本的には1回のPRAに対する申請でBIでのビザの承認・給付まで行われ、ビザ承認の連絡を受けた後にPRAに出向き、SRRVが付されたパスポートの受取りと残りの形式的な手続き行えば完了となります。

これに対し、SIRVの場合は早見表の項目⑫に記載の通り、仮のSIRVである仮発給SIRV(Probationary SIRV)の付与を受ける申請手続きと、本来のSIRVである無期限SIRV(Indefinite SIRV)の付与を受ける申請手続きとの2段階のステップを踏む必要があります。

第1段階は、BOIからの指示に従いあらかじめフィリピン国内の指定銀行に75,000米ドルを送金し、ペソで定期預金口座を開いた上で、Probationary SIRV(仮SIRV)の付与を受けるための必要書類を提出しての審査です。

第2段階は、仮SIRVの有効期間である6か月以内に定期預金を実際の投資に変換した上で、投資内容を証明する書類等の必要書類を提出して無期限SIRVの付与を受けるための審査です。

このようにSIRVの申請手続きの方がやや複雑であり、要求される書類も多いです。

(3)ビザ取得後の維持面での違い

SRRVでは基本的には毎年年会費を支払うだけでよいのでシンプルです。

一方のSIRVは毎年、SIRV IDカードの更新時に年次報告書を提出する必要があります。年次報告書は毎年の投資の状況を示す書類を添付又は提示し、ビザ保有者が宣誓の上署名します。投資対象のカテゴリーにより必要書類が分けられていて、上場していない会社の場合は要求される書類が多くなります。

4.おわりに

リタイヤ後の生活を、フィリピンをセカンドホームとして長期滞在するためのビザとしてSRRVとSIRVを比較してみました。年齢要件、金銭的要件を満たしていれば、どちらも比較的取得しやすいビザだと言われています。

しかし両者をじっくり比較してみると、SIRVの方が手続き面でやや複雑なため、投資に主体的に取り組みたい方に向いていると思います。

現在は新型コロナ関連による入国規制がありビザの発給に関しても不透明な部分があります。再び自由に入国できるようになったときにスムーズに申請が進むようにビザ取得に必要とされる要件の確認、必要書類の手配方法の把握、入国のために必要な最新情報の入手など、今できる準備をしっかりしておくことが大切ですね。