ブラジルではじめて商標登録する方に知ってほしい4つのポイント

最終更新日 2023-06-23

「ブラジルに輸出しようという計画が現実味を帯びてきた」、「ブラジルでも自社の商標が使えるようにしておきたい」、「ブラジルの商標制度はどうなってるのだろう」………。

ブラジルでの商標登録について真剣に考え始めた方に、はじめに知っておいてい欲しいポイントを4つ取り上げて紹介します。

  1. 商標登録は早い者勝ち、しかし先使用の例外あり
  2. マドプロ出願での指定も可能
  3. 日本の商標制度との目立った違い
  4. ブラジルの商標制度に関する印象

1.商標登録は早い者勝ち、しかし先使用の例外あり

ブラジルでも、日本や世界の多くの国と同様、商標登録は先に出願した者が優先されます(先願主義)。

しかし、例外として先使用(出願前の使用)による優先的な権利が認められる場合があります。ブラジル産業財産法によれば、他人の抵触する商標出願の出願日(又は優先日)の6か月以上前からブラジル国内において善意で同一又は類似の商標を使用していた場合、その使用者は、その先使用を登録のための「優先的権利」の根拠として主張することができます(ブラジル産業財産法第129条第1項)。

そのため、日本企業がブラジルで商標出願してその商標が公報に掲載された直後に、その出願日よりも6ヶ月以上前からブラジル国内で類似する商標を類似する商品について使用をしている第三者から、日本企業の出願が登録されるのを阻止するために「異議申立て」がなされるる可能性があります。

ブラジルで商標出願をする前に、商標調査を行い、可能であればブラジル国内の関係者や取引先等から未出願・未登録の類似商標が使用されている事実はないかについても情報を得ておきましょう。

ブラジルも商標権は商標登録により発生します。未登録の商標でも保護されるのは著名・周知商標だけです。著名性・周知性の立証も高いレベルが要求されますので、ブラジル国内で使用する商標については、商標登録を取得することをお勧めします。

2.マドプロ出願での指定も可能

ブラジルは2019年10月にマドプロ加盟国となりました。日本からのマドプロ出願を行う際に、ブラジルを指定することができます。

南米では、他にはコロンビア(2012年)、チリ(2022年)しか現時点では加盟していないので、2億人ほどの人口を有する南米の大国、ブラジルが加盟していることは貴重です。

また、2021年のWIPOの統計データによると、受理官庁としての商標出願件数の世界ランクは、ブラジルは9位です(日本は10位)。

3.日本の商標制度との目立った違い

南米の国に多いのですが、出願してすぐに出願が公開(公告)され60日間の異議申立て期間があります。異議申立てがあればその審理が終結した後に、異議申立期間内に異議申立がなければその後に、実体審査が行われます。

実体審査で拒絶理由通知が出された場合は、それに反論する場合は不服審判を請求する必要があります。第1回目のオフィスアクションへの応答が審判請求というのは、中国の商標制度と同じですね。

不使用による取消しは、登録日以後、継続して5年間、登録商標を使用していなければ不使用取消請求の対象となります。

同一の所有者が所有する類似関係にある商標は、一括して譲渡しなければ、職権で取消されます。また、出願又は登録を譲渡する場合は、その指定商品・役務の一部の譲渡は認められず、その全体について譲渡しなければなりません。

4.ブラジルの商標制度に関する印象

出願手続きは、委任状には公証人・アポスティーユ認証などは要求されず、他の南米諸国と比べて、手続きはしやすいと思います。

現地の代理人も英語が流暢で洗練された弁護士が多いという印象です。商標に強い弁護士を見つけるのにも苦労しないと思います。

ファーストアクションに対する応答が審判請求となり、その後も不服手続きを行う場合は裁判手続になることから、手続きが長期化すれば、代理人費用がいつの間にか高額になってしまうケースがあります。小まめに費用見積りを要求するなど、代理人に任せきりにしないことが大切です。

まとめ

ブラジルの商標登録手続きをはじめて行う方に向けて、ぜひ知っておいていただきたいポイントを挙げました。先願主義を原則としつつ限定的ですが先使用が認められる場合がある点、マドプロでの指定が可能、拒絶理由の対応について審査官に直接意見を述べる機会はなく審判請求で争う点、それから代理人費用の管理が大切という点を紹介しました。南米の大国であるブラジルは、商標出願件数も南米では第1位です。日本の商標制度との違いはありますが、他の南米諸国と比較して出願手続き自体は行いやすい国です。ブラジルで事業を行う際の参考にしてください。