中国ではじめて商標登録をする方に知って欲しい5つのポイント

最終更新日 2023-06-20

「中国に輸出しようという計画が現実味を帯びてきた」、「中国でも自社の商標が使えるようにしておきたい」、「中国での商標をめぐるトラブルのニュースが気になる」………。

中国での商標登録について真剣に考え始めた方に、はじめに知っておいていただきたいポイントを5つ取り上げて紹介します。

  1.  商標登録は早い者勝ち

2.商標登録出願件数は世界一

3.漢字の国だからこその難点

4.日本とは何かと相違点の多い商標制度

5.代理人を選ぶ際の注意点

1.商標登録は早い者勝ち

中国でも、日本や世界の多くの国と同様、商標登録は先に出願した者が優先されます(先願主義といいます)。自社の商標を既に日本や外国で使っている場合、誰かが中国で先に商標出願している可能性があります。

全く同じ商標でなくても、類似する商標がすでに出願・登録されている可能性は、中国での商標登録出願件数の多さを考えてみると、更に高まります。

類似する商標というのは、商標の外観がよく似た印象を与えることや、商標の文字の読み方が漢字・ピンイン・英文字の別を問わず、耳で聞くと紛らわしく聞こえることや、商標から思いつく意味合いが似ていることなど、広い観点から判定されます。

審査における商標が類似するかどうかについての「商標審査及び審理基準」(2016年12月)の日本語訳がジェトロのウェブサイトに掲載されています。この64ページから96ページに具体例が掲載されていますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

日本でしか販売していない製品の商標が中国で他人に出願・登録されていたという事例をよく耳にします。中国への進出を考え始めたら、できるだけ早く、中国での商標取得を検討しましょう。ただ検討するだけでなく、すでに他人に商標を取られていないかを調べる商標調査に着手し、必要に応じて出願手続きを開始して、先に出願した事実を作っておきましょう。

2.商標登録出願件数は世界一

中国の商標登録出願件数の詳細はインターネットで検索していただくとして、中国は商標登録出願件数が世界一の多さです。

中国では商標登録の1区分ごとに1件と数えていることもありますが、実際、他国と比べて出願件数が多いことに間違いはないようです。

出願件数が多いから中国は知的財産権に対する意識が高いかといえばそうでもないようです。商標売買ビジネスのため、輸入総代理店になろうとするために、他国の商標(必ずしも有名な商標に限られない)を我先にと出願してしまう業者が少なからず存在するようです。

出願件数が多いということは、十分な審査官の数を確保できなければ、審査が雑になることが予想できます。ということは、審査・審理手続きにおいて出願人に与えられる限られた応答の機会には、出願人側はしっかりと有効な主張ができるような体制を持っていなければなりません。このような点においても、後で述べる現地代理人の選定は重要になります。

3.漢字の国だからこその難点

中国は言わずと知れた漢字の国です。

漢字1文字1文字に意味があります。そして漢字の組み合わせによって、別の意味合いが生じることがあります。

例えば、日本では地名として認識されている漢字の組み合わせが、中国では、日本の地名とは無関係の独自の意味を有している場合があります。そんなこともあり、日本の地名が中国で商標登録されるという事態が多発しています。

漢字には、中国本土と使われる簡体字、本土以外で使われている繁体字があります。商標として中国国内ではどのような字体を使用するのかを考えて商標登録出願を行う必要があります。

日本で使っている商標の中国語バージョンを考える時は、日本の商標の意味から漢字に置き換えるのか、あるいは、日本の商標の読み方(発音)が似るように漢字に置き換えるのか、これも良く考えなければいけません。

4.日本とは何かと相違点の多い商標制度

隣国でありながら、日本の商標制度と中国のそれとは、ところどころ違っています。

手続き自体は中国の代理人が進めてくれますので、手続きの各ステップにおいて代理人に適切に指示を出していく必要があります。

日本の商標制度との違いに、戸惑ったり、驚いたりすることも少なくありません。驚きポイントをいくつか挙げます。このようなことがあるとあらかじめ知っていれば、心に余裕が持てます。

  • 指定商品・役務の書き方に自由度が低く、決められた名前から選ばされる
  • 指定商品・役務の個数で料金が変わる(マドプロ出願による中国指定を除く。)
  • 出願人の名称として使う、社名の中国語表記を決めなければならない
  • 個人が出願する場合はパスポートか運転免許証の写しの提出が必要
  • 商標中に「日本」、「Japan」、「NIHON」などの国家名を含むと拒絶されることがある
  • 拒絶理由通知の応答期間が15日以内と短すぎる
  • 拒絶理由通知に対して反論する場合は、いきなり審判を請求しなければならない
  • マドプロ出願による中国指定の場合、登録証は発行されない(別の証明書の請求が必要)
  • 香港、マカオには中国の商標権は及ばない

他にもまだまだありますが、日本で通用したことが外国では通用しないことが多々あることは心得ておいてください。

5.代理人を選ぶ際の注意点

日本の企業や個人が中国で商標登録を取得するためには、中国国内に住所を有する代理人を選任する必要があります。

各代理人には得意な分野があるので、商標に強く、できれば自社製品・サービスの分野にある程度詳しく、日本人クライアントを扱った実績のある代理人を選びましょう。日本語ができれば尚よいですが、そうでない場合は、英語など日本語・中国語以外の言語によってコミュニケーションを取り、やりとりの記録を残しておきましょう。

代理人の報酬額は代理人毎に差があります。しかし、中国の商標手続きはとても複雑であり、短期間に適切な対応を行わなければならないことが多いので、価格よりも品質やコミュニケーションの取りやすさ、説明や提案の質を重視して選択すべきでしょう。手続き中に受け取るレターやメールの内容を見れば、ある程度、代理人の能力を推し量ることができます。

まとめ

中国の商標登録手続きをはじめて行う方に向けて、ぜひ知っておいていただきたいポイントを挙げました。このほかにも注意すべきポイントは当然たくさんあります。中国で商標登録を取得することが漠然とでも決まったら、できるだけ早く中国商標の登録手続に実績のある国内特許事務所などに相談しましょう。