【外国商標出願】商品名の英訳で困っていませんか?分類の基準とキーフレーズから解説!

最終更新日 2024-08-25

商標の外国出願で自分で作った商品・サービスの英文表示に自信が持てない、審査官から不備を指摘された時の対応に困ってしまう、と感じることもあると思います。特にマドプロ出願の場合は自作の英文表示がそのまま審査対象になるため、なおさらです。

しかしそんな不安も、商品・サービス表示の書き方のルールと、審査官が納得するような表示の作り方がわかれば解消できます。英文表示をしっかりした根拠をもって作ることができるからです。

この記事では、ニース国際分類での商品・サービスの分類の基準と、WIPO国際事務局のマドプロ出願の審査で受け入れられやすい英文表示の書き方のポイントを解説します。英文表示作成に使える便利なキーフレーズも紹介します。

これを知れば、自分で作った英文表示に自信を持つことができます。

この記事の内容:

  1. 分類と表示の関係
  2. ニース国際分類での商品・サービス表示の分類方法
  3. マドプロ出願で分類・表示の欠陥を指摘される場合とは
  4. 商品・サービス表示の分類を決定づける英語表現の例
  5. 分類がわかりにくい商品・サービス表示に使える便利な英語表現
  6. まとめ

外国出願に使える指定商品記載作成用の無料データベースの使い方について、ブログ記事「外国商標出願のための英語での指定商品の書き方とすぐに使える参考サイト」にまとめましたので、こちらも是非ご一読ください。

1.分類と表示の関係

願書に記載する商品・サービスの表示は、国際分類で定められた分類ごとにまとめて記載する必要があります。願書に書かれた商品・サービスの表示が正しい類に分類されているかは、審査の対象になります。

分類は、商品・サービスの表示の内容に基づいて決められます。分類を決定するのは審査官です。分類が正しくなかったり、分類を特定できる程度に商品・サービスの表示が明確に書かれていなかったりすれば、補正の対象になります。

商品・サービスの表示には分類を決める要素を含めます。表示を作る際には、分類を常に意識する必要があります。

 表示は審査官が分類を特定できる程度に詳細に書く
 表示を作る際には、常に分類を意識する

2.ニース国際分類での商品・サービス表示の分類方法

ニース国際分類は、世界中多くの国で共通の分類として採用されています。商品を第1類から第34類までに、サービスを第35類から第45類までに分類しています。分類ごとに、どのような商品やサービスが含まれるかを大まかに把握できるように「類別表(注釈付き)」の中に「類見出し」(クラスヘディング)が用意されています。類見出しだけでは分類の判断がつきにくいものについては、「注釈」で説明されています。「アルファベット順一覧表」には各分類に属する具体的な商品・サービスが例示されています。PDF形式の一覧表やインターネット上のデータベース(例えば、Nice Classification Publication (NCLPUB)、Madrid Goods and Services Manager (MGS)、商品・役務名検索など)を使って容易に検索できるようになっています。

分類の決められ方は、まずは類見出し、注釈、アルファベット順一覧表を使って該当する類に分類されます。該当する類が明らかでない場合には、「一般的注釈」に定められた基準を使って分類されます。一般的注釈では、商品とサービスに分けて基準が示されています。簡単にまとめてみます。

商品の場合は、どのような態様で取引されるか、例えば、完成品(最終製品)としてなのか、未加工や半加工の原材料としてなのか、他の製品の一部となることを目的とする商品としてなのか、などを特定します。そして、商品の目的(purpose)、機能(function)、材質(material)、作動方式(mode of operation)、状態(nature)、主たる目的・用途、主たる材質、汎用性の有無、などの観点から分類を決めていきます。

サービスの場合は、原則として事業分野(branches of activities)に従って分類し、それができない場合はアルファベット順一覧表中の他のサービスから類推して分類します。賃貸サービス、助言・情報又は指導の提供サービス、フランチャイズの枠組みにおけるサービスについては、それぞれの内容に関連するサービスの分類と同じ類に分類するとされています。

分類判断の要素
商品の場合、商品の態様がわかり、目的、機能、材質、作動方式、状態、主たる用途・材質、汎用性の有無などの分類の基準となる情報が読み取れること
サービスの場合、事業分野が特定できること又はアルファベット順一覧表の他のサービスと比較できること

ニース国際分類の概要と分類の基準を示す一般的注釈の解説について、ブログ記事「ニース国際分類とは?概要と一般的注釈をわかりやすく解説」にまとめましたので、こちらも是非ご一読ください。

3.マドプロ出願で分類・表示の欠陥を指摘される場合とは

マドプロ出願を例にとります。マドリッド協定に基づく規則の第13規則では、商品・サービスの表示が以下のいずれかに該当する場合、国際事務局は欠陥を通報しなければならないとされています。

  1. too vague for the purposes of classification(分類するためには曖昧すぎる)
  2. incomprehensible (理解不能である)
  3. linguistically incorrect (言語的に不正確である)

1つめは、分類を決定するために必要な情報を表示から適切に読み取れない場合のことです。上記の一般的注釈の基準を適用できる程度に詳細な情報がその表示から読み取れない場合や、範囲が広すぎて1つの類に分類できない場合などが含まれます。

例: AI apparatus (Class 9), IT services (Class 42) (範囲広すぎる又は不明確)

2つめは、審査官が理解できない表示、意味をなしていない表示などを含みます。

例: gomagi (Class 20)  (「護摩木」の説明が加えられていなければ理解できないと思われます。)

3つめは、スペルミスや文法上のミスなどにより意味が不明確である表示を含みます。

例: live jackets (Class 25)  (life jacketsのスペルミス)

 分類を決定づける要素を表示に含め、外国人である審査官が理解できるような英語で表現し、スペルミスや文法上のミスをなくす

4.商品・サービス表示の分類を決定づける英語表現の例

商品・サービス表示の中には、分類を決定づける語句が含まれています。それらは、多くの場合、商品・サービスがカバーしようする範囲を特定の1つの分類に限定するはたらきを持ちます。

特に、同じ商品が複数の類に分類可能である場合には、最適な1つの分類を特定できるような語句が含まれていなければなりません。以下にいくつか例を挙げています。各小見出しの右側のかっこ内が分類決定の要素です。太字で示した部分は分類を決定づける部分です。アルファベット順一覧表の例示、MGSで公表されているマドプロ出願の審査でWIPOに受け入れられた表示、その他、Madrid Monitorで検索したマドプロの登録例などから引用しています。

(1)Protein(タンパク質、プロテイン)の例(目的、機能)

  • proteins for use in the manufacture of food supplements (Class 1)
  • protein dietary supplements (Class 5)
  • protein milk (Class 29)
  • high-protein cereal bars (Class 30)
  • protein-enriched sports beverages (Class 32)

(2)Doors(ドア、扉)の例(材質、目的)

  • doors of metal (Class 6)
  • doors for vehicles (Class 12)
  • doors, not of metal (Class 19)
  • doors for furniture (Class 20)

(3)Robots(ロボット)の例(目的、機能)

  • industrial robots (Class 7)
  • humanoid robots having communication and learning functions for assisting people (Class 9)
  • surgical robots (Class 10)
  • self-driving robots for delivery (Class 12)
  • toy robots (Class 28)

(4)Apples(リンゴ)の例(状態、機能)

  • apples, prepared (Class 29)
  • apple pies (Class 30)
  • apples, fresh (Class 31)
  • apple juice beverages (Class 32)
  • sparkling apple wines (Class 33)

(5)Valves(バルブ)の例その1(機能、目的) 

  • valves [parts of machines] (Class 7)
  • feeding bottle valves (Class 10)
  • valves for vehicle tires (Class 12)
  • valves for musical instruments (Class 15)

(6)Valves(バルブ)の例その2(材質)

  • valves of metal, other than parts of machines (Class 6)
  • valves of india-rubber or vulcanized fiber (Class 17)
  • valves of leather (Class 18)
  • water-pipe valves, not of metal or plastic (Class 19)
  • water-pipe valves of plastic (Class 20)
  • valves of plastic, other than parts of machines (Class 20)

(7)Coffee grinders (コーヒー豆器)の例(作動方式)

  • coffee grinders, other than hand-operated (Class 7)
  • electric coffee grinders (Class 7)
  • coffee grinders, hand-operated (Class 21)

(8)専用品の例(汎用性の有無)

  • carrying cases adapted for computers (Class 9)
  • display screen filters adapted for use with computer monitors (Class 9)
  • beds specially adapted for vehicles (Class 12)
  • fitted footmuffs for strollers (Class 12)
  • bags specially adapted for holding musical instruments (Class 15)

(8)サービスの例(賃貸やコンサルティングの内容に対応するサービス)

  • rental of industrial robots for use in manufacturing (Class 40)
  • rental of robots for preparing beverages (Class 43)
  • rental of surgical robots (Class 44)
  • business management consultancy in the field of robotics technology (Class 35)
  • product development consultation for inventors in the field of robotics (Class 42)

 ここに挙げた英語表現は、商品・サービスの表示において広く使われている慣用表現なので、一から英語表現を考えるより、このような先例を利用するのが効率がよい

5.分類がわかりにくい商品・サービス表示に使える便利な英語表現

受け入れ可能な表示例に含まれていない商品や、新しい商品、日本独自の商品表示を英語にする場合に役立つフレーズを3つピックアップします。これらはいずれも、その商品・サービスを、受け入れ可能な表示例と比較・関連させて説明する場合に使用できます。

  1. 「in the nature of ~」(~という性質をもつ、~という特徴をもつ、~を内容とする)
  2. 「used as ~」(~として使用される)
  3. 「being ~」(~としての、~である)

上記の表現を使った例です。

第22類乗物用の荷物エリアのライナー(型に合わせていないもの)unfitted liners for the cargo area of vehicles [in the nature of a tarp]※1
第25類袖付きの毛布の性質を有する着用可能な毛布wearable blankets in the nature of blankets with sleeves
第3類毛穴引き締め用美顔パックpores tightening mask packs used as cosmetics※2
第29類代用牛乳として用いられる大豆ベースの飲料soya-based beverages used as milk substitutes
第28類お手玉beanbags being playthings※3
第9類ガス分析器及びディーゼルスモークメーターとしての自動車排出物分析器automotive emissions analysers being gas analysers and diesel smoke meters
第35類商工会議所による地場産業及び観光事業推進のための企画及び実行chamber of commerce services in the nature of promoting local business and tourism
第41類お化け屋敷を内容とする娯楽の提供entertainment in the nature of a haunted house attraction
第45類警備としての付き添いescort services being security services
  • これらはWIPOのIPポータルの「Madrid Monitor」で検索したマドプロの登録例です。MGSで公表されていないものも含まれています。また最新版のニース分類では異なる場合もある点ご注意ください。

※1英文のカギかっこ内は「タープの性質を持つ」となっており、タープ(ターポリン)と同じ分類が適切だと判断されています。※2英文では「化粧品として使用される」とあるので、化粧品が属する分類となっています。※3英文では、「おもちゃである」となっているので、おもちゃが属する分類となっています。

これらの表現を使うことで、その商品がどの分類に属するものであるかを積極的に表現することができます。日本で認められた表示中に既に含まれているものもあれば、新たに追加する必要があるものもあります。これらの表現は、審査官から表示が不明確であるとして補正指令を受けたときに、その応答において、商品の性質や用途などを明らかにする場合にも使うことができます。

 分類がわかりにくい商品・サービスの場合は、既に認められている表示例に関連づけて説明すると受け入れられやすくなる

6.まとめ

この記事では、アルファベット順一覧表やMGSなどの受け入れ可能な表示例に載っていない商品・サービスの英文表示を自作するための考え方と英語表現例を紹介しました。日本語の商品表示をそのまま英訳するだけでは十分ではなく、その表示には分類を決めることができる程度に詳細な情報が必要です。更に、分類を1つに特定するために範囲が限定されている必要があります。

商品・表示を作成する上で、審査官が分類を決定するための情報が含まれているかという視点が重要です。ここで挙げたような分類を決定づける要素とフレーズを意識するだけで、しっかりした根拠に基づいた英文表示を作ることができます。審査官から指摘を受けた時でも、自分が作成した表示に対して何を要求されているのかを理解するヒントにもなるはずです。

当事務所では、外国商標に関する様々なお困り事に対するサポートを行っています。外国出願をしようとする商品の分類や適切な表示がわからない、日本での商標登録の指定商品・役務の英語訳を作ったがこれでよいか自信が持てない、現地代理人に商品・サービスの説明をしたいのだがどのように表現すればよいかわからない、など外国商標についてお困り事がありましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。ご相談はこちらのお問い合わせフォームから、お待ちしております。