外国で商標を登録すべき2つの理由と実際に得られる具体的なメリット

最終更新日 2021-07-05

海外進出するから海外でも商標登録を取得したい、けれどかなりの費用と時間がかかるのでは、とお悩みの方も多いと思います。だからといって、商標を登録しないで海外に進出するのは、ビジネス上のリスクが大きすぎます。

商標登録が必要な理由を理解しておけば、そのプロジェクトに費用と時間を投入すべきかどうかの判断がしやすくなります。そこで今回は、商標を使用したい海外の国々で商標を登録すべき2つの理由と実際に得られた具体的メリットの例を紹介します。

海外で商標を登録すべき2つ理由と具体的なメリット
1.自分が登録しないと他人に登録されていまう可能性がある
2.登録すると様々なメリットがある
3.具体的なメリットの例

1.自分が登録しないと他人に登録されてしまう可能性がある

商標の登録は、基本的には早い者勝ちです。類似の商品・サービスに使用する類似の商標が出願された場合には、一日でも早く出願をした人の商標が登録されます(先願主義)。欧州の一部の国などでは、類似の商標に関する審査(相対的拒絶理由の審査)は行われないため、どちらも登録されてしまう場合もありますが、係争が生じた場合には、出願日が早い方が有利になります。

したがって、自分が出願しなければ、自分の商標と同一または類似の商標を他人が出願してしまうリスクがあります。偶然によく似た商標を出願する場合もあるし、本人が出願していないことを知って意図的に同一の商標を出願するという悪質な場合もあります。

自分の商標を他人に商標登録されてしまったら、自分はその商標を使用できなくなります。その商標が商品名やサービス名だったら、名前を変えるとことで対応できます。しかし、会社名や会社のシンボルマークの場合だとそう簡単にはいきません。

自分の商標を他人に登録されてしまったら、相手から権利行使を受けた場合には次のような対応が必要になる場合があります。これは、言わば外国で商標登録を取得しないことのデメリットです。

  • 自分の商標を削除・変更しなければならない(宣伝広告物やパッケージ変更、製品に印字された商標の抹消、新商標の登録費用)
  • 相手方からの商標権侵害の警告や訴えに対する防御手続き(弁護士費用等の諸費用、商標局や裁判所での手続き費用、手続きの長期化、商標使用の中止、損害賠償)
  • 取引先への補償や契約違反等への対応
  • 他人の商標権を侵害した会社というネガティブイメージへの対応

これらの事態への対応に要する費用や期間を考えると、商標登録のための出願を行い、確実に登録を取得しておくことには十分なメリットがあることは明らかです。

2.登録すると様々なメリットがある

商標登録すると、自分が指定された商品・役務についてその商標の正当なオーナーであることが公的に証明されたことになるため、次のような一般的なメリットがあります。

  • 他人による類似商標の使用の中止を求めることができる。
  • 他人による類似商標の登録を妨げることができる。
  • 他人による侵害行為により損害を被った場合は損害賠償を求めることができる。
  • 水際でのニセモノ対策として、その国の税関に取締りを申し立てることができる。
  • 有効期限を更新することで半永久的に登録を維持できる。
  • 商標を使用許諾(ライセンス)して、使用料(ロイヤルティ)収入が得られる。
  • 商標権を譲渡して、収入を得ることができる。
  • 商標権を質権の対象として資金を調達することができる。

3.具体的なメリットの例

上記以外にも、使い方次第で非常に大きなメリットが得られます。以下は全て実際に得られたも具体的なメリットの一例です。

  • 海外でフランチャイズ展開する場合など、品質基準やルールに従うことを条件に商標を使用できるという契約にすることで、一定の品質やサービスの質を保つことができる。
  • その国で商標登録していれば、他人の権利を侵害する可能性は極めて低いことから、現地取引先から商品を採用されやすい。または現地の商業施設等への出品が認められやすい。但し、無審査国(相対的拒絶理由を審査しない国)では必ずしもそうとは言えませんのでご注意ください。相対的拒絶理由については、【ブログ】はじめて外国で商標を登録しようとする経営者が最低限知っておきたい4つのポイントで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
  • 複数国で商標登録していると、商標の周知性、著名性の立証に使える。
  • ある国の審査で他人の既存の商標登録によって拒絶された場合、自分が別の国で商標を登録していることを交渉の材料にして、同意書(コンセント)を提出することで拒絶理由を克服できる国もある。
  • 複数国で商標登録していると、別の国での審査で問題があった場合(特に識別力不足で拒絶された場合)、他国の登録状況を参考情報として提出できる。
  • 英連邦の国々では、英連邦の主要国での審査が参考にされることがある。英連邦の主要国(イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポールなど)のいずれかで登録できていると、他の英連邦の国の審査において有利になる場合がある。
  • アンデス共同体加盟国(ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー)ではその中の1カ国で登録していれば、登録した国で使用していなくても、他の加盟国で使用していれば、不使用による取消しを免れることができる。
  • 登録した商標が適切に使用されれば、次第にその国の消費者や需要者に認知されていく。その結果、その商標(商品名やシンボルマークなど)が付いているだけで安心して購入してもらえ売上に直結する。
  • 各国の商標データベースや国際的な商標データベースで検索可能となる。その結果、商標管理、知的財産権の管理に積極的であるというイメージを持たれる。

これらの2つの理由は、ビジネス上のリスク回避、利益追求、法令順守、企業イメージに関係するものです。商標登録の永続性、原則として早い者勝ち(先願主義)という性質、登録しなかった場合に要するコスト、長期的視野に立ったメリット等を考慮に入れ、外国における商標登録の必要性を総合的に検討しましょう。