最終更新日 2021-07-05
- 日本の果物の種が海外に不法に持ち出されて生産されている。
- キウイフルーツのZespriは本国ニュージーランド以外での国でも品種登録をして、南半球と北半球の気候の違いを利用して一年中安定供給できる体制をとっている。
など、最近の種苗法改正のニュースと共に、品種登録に関するニュースに触れる機会が増えています。品種登録がグローバルな関心を集めている今、世界での植物新品種の登録の共通事項を定めたUPOV条約について概要を解説します。
この記事からわかること
それでは、順番に解説していきます。
1.UPOV条約とは
UPOV条約(UPOV Convention)の正式名称は、日本語では、「植物の新品種の保護に関する国際条約」、英語では「International Convention for the Protection of New Varieties of Plants」です。UPOVのウェブサイトには様々な有用な情報が掲載されています。
UPOV条約という通称は、この条約に基づいて設立された政府間機関である「植物新品種保護国際同盟」(Union internationale pour la protections des obtentions végétales)の略称に因んだものです。
この同盟の本部はスイスのジュネーブ。UPOV条約は1961年に採択され、1972年、1978年、1991年に改正。2020年2月3日現在では76の国又は地域が加盟しています。
UPOVのミッションは、社会の利益のために植物新品種の開発を奨励することを目的として、植物品種保護のための効果的なシステムを提供し広めていくことです。植物品種保護制度を導入している多くの国では、UPOV条約に沿った形で独自の制度を構築しています。
2.UPOV条約の主な内容
- 植物の新品種を保護するために、一定の要件を満たした新品種を開発・育成した者(ブリーダー)に育成者権(breeders’ right)を付与することとし、各メンバーは育成者権を付与し保護することが義務付けられています。
- 保護されるためには、育成者は保護を必要とするそれぞれの国又は地域に個別に出願を行わなければなりません。
- 保護されている品種の種苗に関して、また一定の場合にはその収穫物に関して、育成者の許諾が必要となる行為が規定されています。
- 育成者権を付与する主な条件として、保護を受けようとする品種について、新規性(未譲渡性)があり、区別性(Distinctness)があり、均一性(Uniformity)があり、安定性(Stability)があり、そして品種名称が適切であることが挙げられています。
- 育成者権が及ばない行為として、私的かつ非営利目的の行為、試験目的の行為、他の品種を作り出す行為が挙げられています。
- その他共通原則として、内国民待遇、優先権制度、各国保護の独立が定められています。
3.UPOV条約のメンバー
UPOV条約のメンバーは、UPOVのウェブサイトにあるメンバー一覧表で確認してください。
欧米諸国やオーストラリア、ニュージーランド、南米の多くの国、アジアでは日本、中国、韓国、ベトナムが加盟しています。アフリカは少ないです。
UPOV条約は1978年と1991年に大幅に改正されており、両者では保護対象となる植物の範囲や育成者権の存続期間をはじめとして相違点がいくつかあります。未だ1978年の改正条約にとどまっている国も多数あるため、保護を求める国がどちらの条約の締約国かを確認する必要があります。上記のメンバー一覧表で確認できます。
1978年改正条約の締約国は、例えば、中国、ニュージーランド、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、チリ、南アフリカなど。ヨーロッパでは、欧州連合は1991年改正条約のメンバーですが、イタリア、ポルトガルは1978年改正条約のメンバーです。
まとめ
UPOV条約のメンバーであれば、1978年改正条約か1991年改正条約のどちらの締約国であるかの確認は必要ですが、基本的な植物品種保護制度は整っているので、日本から外国出願を行う場合でもある程度の枠組みは想像できます。また、内国民待遇の原則があるので、相手国がUPOVのメンバーであれば、その国の国民と同様の保護が日本人にも与えられるので安心感はあります。
UPOVのメンバーでない国は、UPOV条約を参考にする国もあれば、独自の制度を採用している国もあります。
UPOVのメンバーであってもなくても、国によって様々相違点があるため、出願を検討する場合には出願予定国の最新情報の収集が欠かせません。