最終更新日 2024-08-25
米国での商標出願手続きや登録維持手続きでは、署名済みの宣誓書の提出が必要となります。虚偽の内容が含まれた宣誓書に署名すると、署名者が罰金や禁固刑になるおそれがある他、登録が取消される可能性もあります。宣誓書はいつ、どのような内容のものが必要となるか、宣誓書に署名する際に注意する点は何かについて解説します。
1.宣誓書とは真実を述べる文書
宣誓書とは、真実を述べた正式な文書のことをいいます。英語では、verified statement, oath, affidavit, sworn statementなどの言葉が対応しますが、これらに代わってdeclaration(宣言書)も宣誓書として用いられます(米国商標規則第2.20条)。同規則によれば、宣誓書には、次のような文言を使用することができるとされており、すべての宣誓書にこのような文言が含まれています。
The signatory being warned that willful false statements and the like are punishable by fine or imprisonment, or both, under 18 U.S.C. 1001, and that such willful false statements and the like may jeopardize the validity of the application or submission or any registration resulting therefrom, declares that all statements made of his/her own knowledge are true and all statements made on information and belief are believed to be true.
37.C.F.R. §2.20
署名者は,故意の虚偽陳述及びそれに類するものは,18 U.S.C. 1001 に基づき罰金若しくは拘禁又はその併科により処罰されること,並びにそのような故意の虚偽陳述及びそれに類するものは,出願若しくは提出物又はそれから生じる登録の有効性を害する虞があることについて警告を受けており,本人自身の知識によって行うすべての陳述が真実であること,並びに情報及び信念に基づいて行う すべての陳述は真実であると信じられていることを宣言する。
引用元:日本国特許庁のホームページ「諸外国・地域・期間の制度概要および法令条約等」に掲載されている米国の商標規則の仮訳より
米国の商標出願手続きにおいて使用される宣誓書には、宣誓の内容に加えて必ず上記の文言が含まれています。これにより、宣誓書に署名する人は、偽証罪に問われ商標登録が取り消されるおそれがあることを十分に理解した上で、宣誓書等への記載内容が真実であると信じていると宣誓することになります。
規則§2.193によれば、商標の所有者に代わって宣誓書に署名できるのは、次の者とされています。
(i) 所有者に法的権限を有する者(例えば会社役員又は共同事業体の長)
(ii) 事実を直接知っており,かつ,実際上の又は含意された,所有者の代理で行為する権限 を有する者,又は
(iii) §11.1 に定める弁護士であって,所有者からの書面又は口頭による実際上の委任状又 は黙示の委任状を有する者
引用元:前出の日本国特許庁ホームページ掲載の米国商標規則仮訳より
書類の形式としては、宣誓書として一つの文書になっているものあれば、出願の願書など他の文書の一部に宣誓内容が含まれている場合もあります。
2.宣誓書が必要となるタイミングとその内容
宣誓書には、出願人の代表者や出願人により選任された米国代理人が署名するものがありますが、特に出願人代表者の署名が必要となる(又は望ましい)宣誓書の例を挙げます。
提出時期 | 書類名 | 主な宣誓の内容 |
出願時 | 願書内での宣誓 Trademark/Service Mark Application | 出願の根拠によって異なる。 ・全ての商品・サービスについて商標を取引において使用していること(1a) ・全ての商品・サービスについて商標を取引において使用する誠実な意思を有していること(1b, 44d, 44e) |
マドプロ米国指定時 | 標章を使用する意思の宣言書 Declaration of Intention to Use The Mark | 全ての商品・サービスについて商標を取引において使用する誠実な意思を有していること |
使用開始時 (審査終了まで) | 使用宣誓書 Amendment to Allege Use | ・出願商標が願書又は許可通知書に記載された全ての商品・サービスについて取引において使用されていること ・使用見本は商品・サービスについて商標が取引において使用されている状態を示していること |
使用開始時 (許可通知発行日から6ヶ月以内。36ヶ月まで延長可) | 使用宣誓書 Statement of Use | ・出願商標が許可通知書に記載された全ての商品・サービスについて取引において使用されていること ・使用見本は商品・サービスについて商標が取引において使用されている状態を示していること |
・登録日から5~6年目 ・登録日から9~10年目 ・その後10年毎 | 第8条宣誓書(継続使用宣誓書) Declaration of Continued Use or Excusable Non-use | ・登録商標が登録証に記載された全ての商品・サービスについて取引上使用されていること ・使用見本は商品・サービスについて商標が取引において使用されている状態を示していること |
同上 (マドプロ米国指定用) | 第71条宣誓書(継続使用宣誓書) Declaration of Continued Use or Excusable Non-use | ・登録商標が登録証に記載された全ての商品・サービスについて取引上使用されていること。 使用見本は商品・サービスについて商標が取引において使用されている状態を示していること |
登録日の後、5年間継続使用した期間の満了日から1年以内 | 第15条宣誓書(不可争性宣誓書) Declaration of Incontestability | ・登録商標が登録書に記載された全ての商品・サービスについて、登録日から5年間継続して使用されており現在も使用中であること ・かかる商標の所有権、それを登録する権利又はその登録を維持する権利に対して不利な最終判決が下されていないこと ・USPTO又は裁判所においてかかる権利に関するいかなる手続きも係属しておらず又は処分が下されていないこと |
上記の表は主な宣誓の内容を書いたもので、実際にはそれ以外にも多くの宣誓内容が含まれています。署名する書類の宣誓内容を細かく確認してください。
第15条宣誓書の提出は登録を維持するための義務ではなく、オプションです。これを提出する場合のメリットが大きいので、通常は登録後第5年目から6年目の第8条宣誓書又は第71条宣誓書の提出のタイミングで同時に提出されることが多いです。
第8条宣誓書と第15条宣誓書は両方の宣誓が組み合わさった宣誓書が使用される場合が多いです。マドプロ米国指定の場合には、第71条宣誓書と第15条宣誓書も同様です。
第8条宣誓書は米国での更新手続きの際に、第9条の更新申請書と併せて提出されます。
マドプロ米国指定の場合、更新手続きはWIPOに対して行われますが、登録を維持するためには、米国の登録日(国際登録日ではないことに要注意!)を起算日として、USPTOに対して(WIPOに対してではないことに要注意!)第71条宣誓書、第15条宣誓書を提出します。
3.宣誓書に署名する前に必ず確認すべき6つの項目
以下の点を確認しましょう。
- 偽証罪に問われることや虚偽の声明で登録を取得した場合には登録が取り消されるリスクがあることを理解した上で、事実が書かれていることを確認して署名する。
- 署名者に署名権限があることを確認する(上記1.参照)。
- 商標の使用に関する宣誓の場合は、全ての商品・サービスについての使用の有無の宣誓が要求されるため、使用していない商品・サービスは願書又は登録簿から削除されていることを確認する。
- 誠実な使用予定に関する宣誓の場合は、明らかに使用予定のない商品・サービスが記載されていないことを確認する。
- 登録簿等に記録されている商標の所有者情報(名称、住所等)が最新のものにアップデートされていることを確認する。
- 宣誓書の提出期限を確認し、署名の日から1年以内のものを提出する。
当事務所では、外国商標に関する様々なお困り事に対するサポートを行っています。米国商標登録手続で使用するフォームに何が書かれているかわからない、フォームの目的や意味を上司にうまく説明できない、など外国商標についてお困り事がありましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。ご相談はこちらのお問い合わせフォームから、お待ちしております。